むかしばなし 其の七 (終話)

其の七  ただ、東の国には、こんな言い伝えが残っております。  隣の小国より、お姫様がお輿入れになったその日に、南の大国が攻め入ってきたのでございます。東の国でもいずれは南が戦を仕掛けて来るであろうことは予測はしておりましたが、まさかめでたい婚儀の日に戦になろうとは、だれも知るよしもございません。姫様はなんとかご無事に東のお城に入ることはできましたが、戦とあっては婚儀は中止、婿の若様もこ…

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むかしばなし 其の六

其の六  姫様のお輿入れの朝、それはそれはよい天気で、朝の日の光は姫様の心とは裏腹に、眩しく輝いておりました。  城下には、南の国との大戦になる直前というのに、国中の民が姫様のお輿入れの様子をその目におさめようとあふれ返っておりました。ただ、あまり笑顔は見えません。かつて日照りに苦しむこの国を救った女神かともあがめられ、愛されていた姫様です。それだけではありません、姫様が文武と秘かに出会…

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むかしばなし 其の五

其の五  姫様は、それ以来、またずっとご自分のお部屋に閉じこもってしまわれました。子犬の咲耶のお散歩でさえ、侍女やご家来衆に任せきりになってしまい、そのせいか、咲耶にも元気がなくなってきた様子。以前なら、姫様の周りはお花が咲いたように明るく華やかであったものが、今では沈んでもの悲しい雰囲気に包まれておりました。  母上様はそんな姫様のご様子を大変心配され、殿様にご相談されておりました。し…

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むかしばなし 其の四

其の四  それから何日も泣き通した姫様でしたが、そのうち涙も涸れ果てたのか、泣くことはなくなりました。ただ、姫様のお顔からは優しい微笑みは消えてしまわれました。そして、ご自分のお部屋の中に閉じこもってしまわれたのです。  母上様はその姫様のご様子にひどく心を痛め、殿様に手まりを返してあげられまいか、と、何度もお願いしたのですが、その願いは聞き入れられません。もちろん、母上様には、姫様の悲…

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むかしばなし 其の三

其の三   そんなことがあった次の日。姫様は昨日と同じように菜の花畑で手まりを楽しんでおりました。昨日と同じようにかわいい声でお歌を歌い、昨日と同じように子どもたちが集まり、そして、昨日と同じように近くの水路に手まりを落としてしまわれました。手まりは昨日と同じように城の堀まで流れ着いて、また昨日と同じようにかの若者が不格好に泳いで手まりを拾い上げたのでございます。昨日と同じようにうつむいた…

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むかしばなし 其の二

其の二  その日は、春うららかな日でございました。城の周りには菜の花が咲き乱れ、この暖かな日を待ちわびた蝶が、菜の花畑をひらりひらりと舞い飛んでおりました。その菜の花畑の近くで、姫様は城を出て、母上様からいただいた手まりで遊んでいたのでございます。  めったに城の外へは出ることはない姫様でございますが、その日は本当によいお天気で、菜の花があまりにも鮮やかな色を放って咲き誇っていましたので…

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むかしばなし 其の一

其の一  それは、もうむかしむかしのことでございます。世は戦乱に明け暮れ、人々は、明日にも、いえ、今日にも戦が起きるのではないかと、たいそうおびえて暮らしておりました。  そんな中、平穏の時を過ごしている小さなお国がありました。そのお国は、南の大国と東の大国にはさまれておりました。いずれの大国もその小国の地を我が物にしようと企んでおりましたが、山々に囲まれたその小国はまるで自然の要塞で、…

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むかしばなし(改)

遠い遠いある昔 結ばれることない恋人同士 報われることない恋人同士 戦に荒れたその時代 小さな小さなある国の 小さな城がありまして 姫は手鞠が大好きで ぽかぽか日向でにこやかに てんてん手鞠と遊んでた 今日も笑顔で手鞠歌 いつもの調子で手鞠歌 姫はうっかり手を滑らせて 手鞠はころころ堀の中 ぷかぷか浮いて堀の中 それを見つけた下級武士 泳ぎが苦手な下級武士 …

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