風さんとミカド君

真夏の暑い1日。
お日様の光がギラギラまぶしくて、地面のアスファルトも焼けるよう。
ワンコたちも、昼間はとてもお散歩どころではありません。
朝夕がワンコのお散歩ラッシュ。
少し涼しい風が当たりに吹き渡っているからです。

お散歩大好きなミカド君。
でも、そのミカド君も少し元気がありません。
ここ数日、お腹の調子が悪いからです。
何か悪い物を食べた訳でもなく、どうやらもともとお腹の具合が悪い体質なのでしょう。
先日、お医者さんに診てもらいました。
飼い主のお父さんは、何か危ない病気かもしれないって聞かされて、何だか気落ちしていました。
ミカド君もそのお父さんの顔色を見て、心配になっていました。
もしかしたら、ひどい病気なのかもしれない。
そう思うと、怖くなってきました。

今日の夕方のお散歩。
いつものように、少し涼しい風が吹いていました。

「ミカドちゃん、ミカドちゃん!」
懐かしい声でした。
風さんです。
「風さん!こんにちは!久しぶりだね。うれしいなあ!」
風さんも優しく涼しく、にっこりとしています。
「ホントに久しぶりね。いつもお散歩の時見かけているけど…。」
と、風さんの声がくもりました。
「今日は何だか元気がないみたいで、声をかけちゃったの。何かあったの?」
すると、ミカド君はうなだれながら、こう言いました。
「ぼく、お腹の調子が悪いんだ。もしかしたら、いけない病気かもしれない。この前、『びょういん』に行ったら、『おいしゃさん』が難しい顔して何か言っていて、それを聞いたお父さんもそれから元気がなくなったんだ。」
「あら…。」
風さんも心配そうに、それまでよりも優しく吹きました。

「ぼく、みんなより早く死んじゃうのかなぁ。」
ミカド君はさらにうなだれてしまいました。
すると、風さんが怒ったように、強く吹きました。
「こら!そんなふうに考えちゃダメ!もっとしっかりしなさい!」
いつもミカド君に優しい風さんが怒ったので、ミカド君はびっくりしました。
「ご、ごめんなさい!でも…、心配でさ…。」
「病は気から、とも言うのよ。弱い気持ちでいると、病気になっちゃうし、体も弱くなっちゃうのよ。」
「そうなの?」
すると、風さんは、また優しく涼しく吹き渡りました。
「何を一人で悩んでいるの。あなたのために心配してくれて、一生懸命治そうとがんばってくれているお父さんがいるじゃないの。それに、新しい妹ちゃんたちは、そんなミカドちゃんを見て、どう思うかしら?」
新しい妹。
去年の10月にやってきたシェルティーのサクヤちゃん。
今年5月にやってきた豆柴のコマチちゃん。
二人とも、ミカドお兄ちゃんが大好きなんです。
いっしょにお散歩していたサクヤちゃんもコマチちゃんも、ずっとミカド君を気遣いながらお散歩していました。
ミカド君が歩きたいところに素直についていく二人の妹たち。
ミカド君が立ち止まればいっしょに立ち止まる妹たち。
二人ともミカド君の調子の悪さには気がついていました。
風さんがサクヤちゃんたちに話しかけました。
「サクヤちゃん。お兄ちゃんに言ってあげて。あなたたちがどう思っているかを。」
すると、サクヤちゃんがこう言いました。
「ミカドお兄ちゃん。ミカドお兄ちゃんは強いでちゅよ。いつもワタチたちを守ってくれてるじゃないでちゅか。ワタチの初めてのお散歩の時だって、他のおうちのワンコがワタチにほえてた時、ワタチの前に立って守るようにほえ返していたのがお兄ちゃんだったでちゅよ。」
「サクヤ…。」
風さんが続きました。
「そうね。その時、わたしも空から見ていたわ。ミカドちゃん、たくましくなったなあって。ミカドちゃんは強い子よ。」
「い、今だって、ぼくはみんなを守ってるよ。」
「そうね。それと、この前の大地震の後。あの地震で天国に行って星になった子たちに、こう誓わなかった?みんなの分も、一生懸命生きるって!」
「………。」
「サクヤちゃんにもコマチちゃんにも、ミカドちゃんは頼りになるお兄ちゃんよ。それに、星になった子たちの期待も背負っているの。どんなに大変な病気でも、お父さんが力になってくれるわ。負けないでね。」
「………。」
「ミカドちゃん。まだどんな病気かも分からないのに、それを心配してビクビクしてるなんて、ミカドちゃんらしくないわよ。『今』を、『今日』を精いっぱい生きてごらんなさい。訳も分からない病気なんて気にしないで、もっと『今』を大切に生きてごらんなさい。それが、『明日』につながるのよ。」
うつむいていたミカド君も、ようやく顔を上げました。
「うん。弱気になっちゃダメだよね。ぼく、しっかりするよ。とりあえず、今日の残りのお散歩、一生懸命楽しまなくっちゃね。」
すると、サクヤちゃんはにっこりしてこう言いました。
「ミカドお兄ちゃん!いっしょに歩きまちょう!」
コマチちゃんもこう言いました。
「やっぱりミカドお兄ちゃんは強いでした~♪」
ミカド君もにっこりしました。
「お前たちったら…。ありがとうね。」
風さんもにっこりほほえみました。
「そうでなくっちゃ!やっぱり仲良し兄妹たちね。」
みんなのほほえましい姿を見届けて、風さんはうれしそうに遠くに吹いていきました。

お父さんが歩き出しました。
3ワンコはニコニコしてついていきました。
すると、お父さんがつぶやきました。
「お父さんも、みんなのためにがんばらなくっちゃな。」
それを聞いて、ミカド君も強い調子で歩を進めました。






















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