風の子守唄 ~2日目~

2日目

目が覚めた。
昨日のことは夢…?
悪い夢…?
……夢じゃなかった…。
「あいごせんたー」の、あのお部屋だ。
おばあさんもいる。
他の子もいる。
昨日はおうちの人がお迎えに来てくれなかった。
でも、でも、今日はきっと来る!
きっと来るんだ!
入り口の前で、おとなしくお座りして待っているんだ。
いい子にしていれば、きっと来てくれる!

「またそんなところでお座りかい?いくら待っても来やしないよ。」
「そんなことないもん!」
「まぁ、あんたの勝手だけどね。」

「しょくいん」さんが、朝のご飯とお水を持ってきてくれた。
やっぱり優しそうで悲しそうな目をしていた。
なんでそんな目をしているの?
僕はご飯を食べながら、「しょくいん」さんの目ばかりが気になっていた。

おばあさんは、ご飯を食べなかった。
「どうしたの?食べないと大変だよ?」
「私はね、もう食べる気がしないんだよ。何日も前からね。食事がのどを通らなくってね。いいから、あんたたちでお食べなさい。」
「うん…。でも、一口くらい…。」
「大丈夫だよ。さぁ、いいから。」
おばあさんが心配だった。
何か元気がなくて、少しも動かない。
おばあさん、本当に大丈夫なのかなぁ…?

朝ご飯の後、僕たちは隣のお部屋に移された。
移される時に気がついた。
僕たちのお部屋の奥にはいくつもお部屋があって、そこには僕たちの仲間がたくさんいるんだって。
みんな、悲しそうな声で泣いている。
さびしそうな声で泣いている。
みんなも僕と同じかなぁ?
おうちの人を待っているのかなぁ?
なんでお迎えに来てくれないんだろう?
みんな、みんな、こんなに待っているのに…。

お昼が過ぎた頃、「にんげん」が来た!
お迎えに来てくれたんだ!
……違う、違う人たちだった。
“お前たち、『あいごだんたい』の人が、『さとおや』になってくれる人を連れてきたぞ!”
「しょくいん」さんは、少し嬉しそうな顔をしてそう言った。
「あいごだんたい」という「にんげん」たちと、優しそうな「にんげん」の女の人が2人やってきた。
“どの子もかわいいのにね。かわいそうに。”
“でも、連れていけるのは、うちでは1匹だけなの。ごめんね。”
「あいごだんたい」の人が連れてきた女の人は、白い小さな女の子を抱き上げた。
“この子にします。他の子もかわいいけれど。でも、1匹しかうちでは無理なので…。”
白い小さな女の子は叫んでいた。
「イヤ、イヤ、おうちの『にんげん』じゃない!何なの、この『にんげん』たちは?またわたしをどこかに連れていくの?おうちの『にんげん』はどうして来てくれないの?」
抱き上げられたまま、お部屋の外につれていかれちゃった…。
残った僕たちを見て、「しょくいん」さんが、また悲しそうな目になった。
“ごめんな、明日は。きっと明日は…!”
なんで謝るの?
僕はきっと悪い子だったからここにいるんだよ。
謝るのは僕なんだ。
ねえ、いい子にしているから、はやくおうちの「にんげん」をつれてきて!
僕は泣きそうになるのをグッとこらえたんだ。

「ギャン!ギャン!キャイン!」
突然、苦しそうな声が聞こえた!
何?
何があったの?
奥の部屋の方だ!
でも…、すぐに聞こえなくなった…。
しばらくすると、何人かの「しょくいん」さんが泣きながら、僕らのお部屋の前を通った。
“ちくしょう!何で、何でだよ…?”
そんなことをぼそぼそつぶやいていた。
僕は入り口に飛びついて
「ねえ!なにがあったの?ねえ!」
でも、僕の言葉は通じなかった。
僕は「しょくいん」さんの涙の訳が気になって気になって仕方がないんだ。

今日もおうちの人は来てくれなかった。
ご飯を食べて、お水を飲んで、そして入り口のところでお座りをして待ち続けたんだ。
「またそんなところにいて。寒いだろ?もう、こっちへおいでなさいな。」
「おばあさん…、今日もご飯を食べてないよ?大丈夫なの?」
「ああ、もう食べる気も何もないんだよ。動くのさえできなくってね。歳だからねぇ。」
「ねえ、きっとおうちの人が来るよ。だから、ご飯を食べてよ。」
「優しい子だねぇ。本当に。こんなに優しい子を何で…?」
「…おばあさん?泣いているの?」
「ああ、だんだん目が見えなくなってきたけど、涙は出るものなんだねぇ。」
「…おばあさん!」
僕はおばあさんの胸の中に潜り込んだ。
あたたかくて気持ちがいい。
みんなもかたまって、気持ちよさそうに寝ていた。

辺りが静かになった。
そしたら、また風さんの声が聞こえた。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  明日こそいいことありますように
  明日こそ誰かが来てくれますように
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れたろう
  今日はぐっすりおやすみなさい~♪

また、風さんが子守唄を歌ってくれている。
ありがとう、風さん。

おやすみなさい。

明日こそ、きっとお迎えに来てもらえるよね…。












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