お月様の光

さてさて、その日も、星のきれいな夜。
そして、例によって、ここに、不思議な力を使って、みんなで楽しく集まっている犬の仲間たち。
ジャーマンシェパードのライナ君。
シェルティーのゆう君とサクヤちゃん。
ラフコリーの風太君。
豆柴のコマチちゃん。
トイプードルの抹茶ちゃん。
そして、ミックスのミカド君。
今夜も、みんなで仲良くわいわい。
笑顔がいっぱいです。


あのお星様のことがあってから、みんなはまたお星様が落っこちてきやしないか、ちょっと心配でした。
ですから、こんなに星のきれいな夜には、みんなで星空をなんとなく眺めてしまいます。
ライナ君とゆう君と風太君も、あののことが忘れられないようです。
「あ~、あの日の夜はホントに大変だったのだ~。」
「あれは、山のてっぺんまで走り通しだったでちからね。ホントに疲れたでちよ。」
「でも、お星様がお空に帰れて、よかったなの~。ほら、今夜もあんなにキラキラ光ってるなの~。」
「まあ、苦労したかいがあったってものでちね。」
「そのとおりなのだ~。」
穏やかな夜。
やっぱりそんな日が一番です。
何事もなく、みんなで楽しく過ごせることが、彼らには幸せです。


ところが、またまた事件が起こったようです。
サクヤちゃんが、のんびり星空を眺めていたライナ君たちのところへ、慌てて走り寄ってきました。
「大変でちゅ、大変でちゅ~!」
ゆったりとした雰囲気から一転、ちょっと緊張が走りました。
「サ、サクヤちゃん?また何か大変なものを拾ってきたのか~?」
ライナ君がサクヤちゃんに聞きました。
サクヤちゃんの後ろから、ミカド君が慌てて走ってきました。
「抹茶ちゃんが、海に飛び込んじまったんだ。」
「何でちって?抹茶ちゃんが?」
ゆう君はびっくり!
もちろん、みんなもびっくりです。
みんなの中で一番体の小さな抹茶ちゃん。
その子が、あの大きな大きな海に、しかもこんな夜中に飛び込んだっていうんですから、こんなに大変なことはありません。
「とにかく、海まで行ってみるのだ~!」
ライナ君がそう言うと、みんなは一斉に海の方へと走っていきました。


海の方に行くと、波打ち際でコマチちゃんが立ちすくんでいました。
コマチちゃんは抹茶ちゃんが心配で、どこかに行ってしまわないかと、ずっと抹茶ちゃんの姿を追っていたのです。
暗い海でしたが、空には半月、まだなんとか抹茶ちゃんの姿が確認できます。
とはいっても、ちょっと高い波、この中で泳ぎの得意なライナ君でも、行ったはいいけど、帰れるかどうかが心配な距離。
みんな、どうしたらいいか、わかりませんでした。
「いったい、どうしてこんなことになったなの~?」
風太君がだれに聞くとはなしに聞いてみると、抹茶ちゃんを見守っていたコマチちゃんが、こう言ったのです。
「お月様のかけらが見つからないでした~!」
お月様のかけら?
どういうことでしょう?
みんなはきょとんとしています。
「お月様のかけらって、どういうことなの~?」
「お月様が欠けていて、まん丸じゃないでした~。
きっと、どこかに落ちちゃったでした~。」
なるほど、確かに今夜は半月。
半分しか光っていません。
「月の満ち欠けのことを言ってるでちね?
あれは、月が欠け落ちちゃったわけじゃないでちよ?
太陽が月を照らしているから、月が光って見えてるでち。
月の位置によって、まん丸く見えたり、欠けて見えたりするんでち。」
一番物知りのゆう君が説明してくれましたが、ちょっとみんなにはちんぷんかんぷん。
「だけど、だけど~!
ほら、海に光が落ちてるでした~!
あれを拾ってきて、お月様に返してあげるって、抹茶ちゃんが海に飛び込んだでした~!」
そうだったんです。
お月様が欠けていてかわいそうに思った抹茶ちゃんは、海に映った半月の光を、お月様が落としちゃった光だと思い込んで、海に飛び込んじゃったんです。
それを聞いたミカド君は、
「バ、バカな!
そんなもの、いつまで追いかけたって、届くわけがないよ。」
と言うと、
「抹茶ちゃ~ん!
帰ってこ~い!」
声を限りに叫びました。
でも、その叫びも波の音にかき消されてしまったようで、もうすぐ夜の闇に姿が消えそうな抹茶ちゃんには届かないようです。
「仕方ない!
今、行くからな~!」
ミカド君まで海に飛び込もうとしました。
「ミカド君!
ミカド君まで飛び込んじゃったら、きっともっと大変なことになっちゃうでち!
落ち着くでちよ!」
「でも、いったいどうしたらいいんでちゅか?」
サクヤちゃんは今にも泣きそうです。
いえいえ、コマチちゃんも。
他のみんなも、実は泣き出しそうなくらいに不安でした。
すると、空から聞き覚えのある声が…。
「任せて!
海のみんなに声をかけるから!」
その声の方に目を向けると、それはこの前のお星様でした。
「お星様~!
助けてくれるのか~?」
ライナ君の言葉に、お星様はきらりと光ってうなずいて、そして、海に向かって、こう呼びかけました。
「海のみんな~!
お魚さ~ん、イルカさ~ん、カメさ~ん!
そのワンちゃんを助けてあげて~!」
すると、どうでしょう。
抹茶ちゃんの周りの海のお水がザワザワという音を立てて、盛り上がってきました。
そして、たくさんのお魚さんやイルカさん、カメさんが、抹茶ちゃんを持ち上げるようにしてくれたのです。
海の仲間たちが、抹茶ちゃんを助けてくれました。
そっと、静かに、みんなが待っている波打ち際まで、抹茶ちゃんを運んでくれました。
みんなは、すぐに抹茶ちゃんを岸に上げました。
やっぱり、抹茶ちゃんは疲れ切っていました。
もう少し遅かったなら、どうなっていたか、わかりません。
「海のみんな~、ありがとうでち~!」
「ありがとうなの~!」
「お星様もありがとうなのだ~!」
「ありがとうでちゅ~!」
「みんな、ありがとう!」
「ありがとうでした~!」
みんなの声に、お星様はキラキラと、海の仲間はバチャバチャと、笑顔でこたえてくれました。


「エ~ン、エ~ン、ヒック、ヒックでしゅ~。」
助かってから泣いてばかりの抹茶ちゃん。
その抹茶ちゃんに、一番お兄さんのミカド君が、ちょっとこわい顔をして、こう言いました。
ほら、抹茶ちゃん。
泣いてないで、みんなに謝るんだよ。」
ごめんなしゃいでしゅ、ごめんなしゃいでしゅ~。」
そんな抹茶ちゃんを、ライナ君が慰めてくれました。
「別にいいのだ~。
だけど、今度でいいから、お星様と笑みの仲間たちに、ちゃんとありがとうを言うのだぞ~?
みんなが助けてくれたのだ~。」
「まあ、とにかくみんな無事でよかったでち。」
ただ、抹茶ちゃんには、まだ疑問に思っていることがありました。
それは…。
「でも、どうしてお月様は欠けちゃったでしゅか?
あのままじゃ、お月様がかわいそうでしゅ。」
サクヤちゃんも同じ気持ちです。
「そうでちゅよ。
まん丸じゃないと、かわいそうでちゅ。」
コマチちゃんも
「早くまん丸にしてあげたいでした~。」
さてさて、小さい子たちに、さっきのゆう君の説明ではちんぷんかんぷん。
どうしたらいいのでしょう。
「ライナっち…。
この子たちには、科学的なことを言ってもダメみたいでち。
夢のあるお話にならないでちかね。」
ゆう君の言葉に、ライナ君は少し考えて、そして、こう答えました。
「任せるのだ~!
抹茶ちゃん、サクヤちゃん、コマチちゃん。
お月様は優しいのだ~。
まん丸に輝くのは1ヵ月に一度くらい、それ以外は、他のみんなに自分の光を分けてあげているのだ~。」
光を分けている…。
どういうことでしょう。
「暗闇で困っている子、悲しくて未来が見えない子、苦しくて目をつぶって泣いている子…。
世界には、心に光がなくなって、寂しい思いをしている子が、たくさんたくさんいるのだ~。」
その言葉に、ミカド君も、ライナ君が何を言いたいのか、わかったようで、こう続けました。
「貧困とか疫病とか、それに戦争っていう、悲しい出来事がたくさんあって、幼くて死んでいく子も、少なくないんだよ。」
「だから、お月様は身を削って、そんな子たちの心に少しずつ少しずつ光を分けているのだ~。
まん丸に満ちていくまでは、お日様の光をいっぱいに蓄えて、まん丸になったら、少しずつ少しずつ、悲しい思いをしている子たちの心に、その光を分けているのだ~。」
さすがはライナ君。
でも、そうだとしたら、ホントに素敵なお話ですね。
お月様の満ち欠けには、そんな理由があったなんて。
その説明に、抹茶ちゃんたちもニコニコ顔で満足そう。
「わかったでしゅ。
お月様がそんなに優しいなんて…。
感激したでしゅ~。」


静かな静かな、穏やかな夜。
そんな夜の、ちょっとした事件。
でも、無事に事件は解決。
これで6ワンたちも、グッスリ眠れそうですね。










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