風さんが教えてくれたこと

今日もミカドお兄ちゃんとお散歩のサクヤちゃん。
今のおうちにきて、もうすぐ八ヶ月。
最初はとまどっていたけれど、今ではすっかりお父さん子。
お兄ちゃんにちょっかい出して、時々遊んでもらって、毎日が幸せ。
お散歩も、最初は苦手だったけど、今では楽しい日課。
ただ、大きな「じどうしゃ」や「でんしゃ」が通ると、立ちすくんじゃいます。

今日は2月とは思えないポカポカ陽気。
お散歩もとっても気持ちいい。
日当たりの良いところで、お父さんはひと休み。

すると、風さんが声をかけてくれました。
「サクヤちゃん、サクヤちゃん。」
ミカドお兄ちゃんから聞いていた風さんのささやき。
サクヤちゃんはうれしくって、すぐに返事をしました。
「風さん!こんにちは!」
風さんもにこやかにお話ししてくれます。
「こんにちは、サクヤちゃん。とても楽しそうね。」
「うん!お父さんとミカドお兄ちゃんとのお散歩、楽しいよ。」
サクヤちゃんはニッコニコ。
サクヤちゃんは、今の家族がとっても大好きです。
「でも、初めてこのおうちにきた時は、こわかったけど…。」
「だったら、どうして今は楽しいのかしら?」
サクヤちゃんは考えました。
そして、こう答えました。
「だって、みんな優しいんだもん!」
その答えに風さんもニッコニコ。
サクヤちゃんのほほを優しくなでてくれました。

ミカドお兄ちゃんは、ひなたぼっこで今はおねむ。
サクヤちゃんは風さんとのお話しを独り占めです。

「ステキな家族でよかったわね。」
「うん。こんなにステキな家族になれるなんて、最初は思ってもみなかったもの。」
そう言うと、サクヤちゃんは少し考えて、そしてこう言いました。
「だけど、どうしてこのお父さんと出会えたのかしら?」
「どうしてそんなふうな思うの?」
「だって、わたしにはたくさんのきょうだいたちがいて、その中のだれが今のわたしのお父さんと出会ってもふしぎじゃないでしょ?どうしてわたしなんだろうな~って…。」
すると、どうしてでしょう、風さんは優しいけれどどこか悲しそうに吹きました。
「あなたが…幸せな星の下に生まれたからかもしれないわ。」
「わたしが幸せの星の下に生まれた?」
サクヤちゃんには何のことかさっぱりわかりません。

風さんはゆっくりと話し始めました。
「あなたたち犬や猫のように『にんげん』にかわいがられている動物はたくさんいるの。でもね、なぜか捨てられちゃう子もいるのよ。」
サクヤちゃんはビックリです。
捨てられちゃう子がいるなんて、思ってもいませんでした。
「なぜ『にんげん』はそんなことするの?」
泣きそうな声で風さんに聞きました。
「そうね。『にんげん』の中には、あなたたちのお父さんみたいな『にんげん』もいれば、悲しくて冷たい心の『にんげん』だっているのよ。思うようになついてくれないとか、おうちを引っ越すとか、飽きたからとか、赤ちゃんが生まれるとは思っていなかったとか、いろいろ理由をつけて、捨ててしまうの。」
そんな目にあっている子たちがいると思うと、サクヤちゃんは悲しくて悲しくてたまりません。
「それでも、たくましく生きる子もいるわ。おさかなの世界では、池や湖に捨てられて、それでもその中で生きているの。ただ、それまでその池や湖、川に住んでいた生き物たちは大騒ぎ!だって、いきなり知らない子たちが入ってきて、今までとは違う世界に変えられちゃうことだってあるの。おかげで、それまで生きていた生き物が少なくなったり、果てはいなくなってしまったりしたところもあるの。」
「冷たい心の『にんげん』のせいで、それまでのおさかなさんたちにも迷惑がかかっちゃったのね。」
「でも、生きていける子たちはいいわ。」
「え?」
「死んでいく子もいるの。」
風さんはより悲しそうな吹き方をしました。
すると、空には少し雲がかかってきました。

ちょっと冷たくなったせいか、ミカドお兄ちゃんが目を覚ましました。
「おっ?サクヤ。風さんとおはなしかい?」
そう言ったミカドお兄ちゃんは、サクヤちゃんの悲しそうな顔色を見て、心配になりました。
「おい?どうしたんだ?」
サクヤちゃんは、風さんに聞いたおはなしをミカド君に伝えました。
すると、ミカドお兄ちゃんはこう言いました。
「ぼくも、それにぼくのきょうだいも、もう少しでそうなる運命だったんだよ。」
「え?ミカドお兄ちゃんも?」
そうです。
ミカド君たちきょうだいは、動物愛護センターの掲示板に《子犬、ゆずります》とのっていて、たまたまそれを見た今のお父さんが引き取りにきてくれたんです。
だけど、もし引き取り手がそこにこなかったら、愛護センターに預けられて、新しい引き取り手の『にんげん』がくるのを待つか、さもなければ、殺されてしまうかもしれなかったんです。
ミカド君は、サクヤちゃんにそのおはなしを教えてあげました。
「なぜ、殺されちゃうの?」
それには風さんが答えました。
「それはね、『にんげん』にとって都合の悪い病気を広げてしまう場合があるの。それに、『にんげん』になつかない犬や猫たちが、うっかり『にんげん』にかみついて、その病気をうつしてしまったり、ひどい場合はかみ殺したりしてしまうことがあるの。だから、引き取り手の『にんげん』が現れないかぎり、捨てられた子たちは殺してしまう、そういう『にんげん』の世界のきまりがあるの。」
「ひどい!ひどい!」
サクヤちゃんは泣き出しました。
「にんげん」の勝手な都合で捨てられたり、世界を変えられたり、殺されたり…。
なんて悲しいことでしょう!

「だけど、そういうきまりの中で、みんなを助けようとしている『にんげん』もおおぜいいるのよ?」
風さんがそういうと、雲が晴れてきました。
そして、ポカポカのお日様が顔をのぞかせました。
「どこに?」
サクヤちゃんがそうたずねると、お日様がお父さんをいっしょうけんめい照らしています。
そして、今度はお日様がこう言いました。
「ほら?サクヤちゃんのすぐとなりの『にんげん』、お父さんもその一人よ。」
「お父さんが?」
今度は風さんがおとうさんのほほを優しくなでました。
「そう。このお父さんのような『にんげん』が、あなたたち生き物の命の大切さを伝えようとしているの。他にも、仲間を作って生き物たちを守ろうとしている『にんげん』もいるの。」
今度はミカドお兄ちゃんが言いました。
「でなきゃ、僕はここにいない。そうだろ?」
サクヤちゃんにほほえみがもどりました。
そうか、だからわたしは幸せの星の下に生まれたってことなんだ。
お父さんは、そんな命を守ろうとしているんだ。
心にあったかいものがこみ上げてきました。
ミカドお兄ちゃんはほこらしげに言います。
「こんなお父さんのような『にんげん』たちがいれば、捨てられる命も少しずつだけど減っていく。そう思わないかい?」
「うん!思う!きっとステキな心のあったかい『にんげん』だっておおぜいいるんだよね!」
サクヤちゃんは思わず、お父さんに飛びつきました。

お父さんは、それを合図かのように歩き出しました。
お父さんについて歩き出したミカド君とサクヤちゃん。
風さんとお日様が、サクヤちゃんに笑顔で手をふりました。
と、おとうさんも、片手をあげて手をふりました。
「お父さん?聞いていたの?」
でも、お父さんはニッコリ笑っているだけ。
ミカドお兄ちゃんも、クスクス笑っています。
「ミカドお兄ちゃん?お父さんも風さんたちとおはなしができるの?」
「さあね?」
ちょっといじわるそうに笑って答えるミカド君。

お散歩はゆっくりゆっくり続きました。

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この記事へのコメント

  • おにぎり

    なんというか 考えさせられますね・・・
    人間って自分勝手ですもんね・・・
    やりたくなければ放り出し
    都合が悪ければ人に押し付ける
    ただそれが大人対大人
    もしくは人間対人間ならいいのですが
    大人の都合で子供に被害や
    人間の都合で動物が殺されるのは見ていられないですね

    ニュースで子猫の殺処分の特集やっていて
    何も分からずまま子猫がガス室?に連れて行かれるのを見て心が痛みました
    殺「処分」ってのが許せません
    捨てたのは私たち人間ですよ
    罰せられるべきは人間なのに
    犠牲になるのはいつも違うものばかりなんですかねぇ?
    2011年02月26日 03:03
  • おにぎり様>
    コメント、ありがとうございます。
    動物に対する冷たい心は、残念ながら人対人にもあるようです。
    都合が悪ければ人をだまし、あるいは殺す。または力のない子どもたちへの虐待、育児放棄など、数え上げればきりがありません。
    ですから、よけいにペットたちに対する命の軽視はそれ以上に広がっているのかもしれません。
    命は大切だということ。
    人であれぺっトであれ、その命はかけがえのないものです。
    それを世に伝えるのが、これからの僕の仕事です。
    2011年02月26日 05:44
  • marippechan

    プチ更新、そして風さんシリーズ、
    サクヤちゃんの成長ぶり、
    なんだか嬉しいですね~(*^^*)
    名古屋に涅サンみたいな人が居てね、
    多分お年も涅サンくらいかと。
    その人を地元のテレビで伝えていてね、
    人に何度か騙されて大変な過去が
    ある人らしいんだけどその時に飼っていた
    愛犬に救われた事がきっかけで
    今はドッグトレーナーとして頑張って
    いるんですが家に帰れば事情がある犬を
    10匹くらい飼ってるんですよね。。
    そういう温かい人も居るってことが
    嬉しかったことを思い出しました。
    涅サンに、是非見て欲しかったな~☆
    風さんシリーズもサクヤちゃんの登場で
    また楽しくなりそうですね♪
    長くなってすみません(T0T)
    2011年02月26日 11:39
  • marippechan様>
    コメント、ありがとうございます。
    心のあったかい人ってたくさんいると信じています。その方の番組、観てみたかったなあ。
    僕は文章で伝える術しか持っていないのが残念です。
    2011年02月26日 12:18

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