ぼくらのステキなおかあさん

「風さん、風さん!どこかのステキなおはなしを聞かせてよ!」
「おや?ミカドちゃんね。そうね、久しぶりにお話しを聞かせてあげるわね。」
「どこか遠い、僕たちの仲間のおはなしがいいなあ。」
「そうかい?じゃあね…。」




おやおや?
何やら「にんげん」の女の子にだっこされたシェルティの男の子がだだをこねてますよ?
「イヤでち!イヤでち!まだお散歩したいでち~!」
“もう!ゆうったら、いうこと聞きなさい!ただでさえお米の袋くらい重いのに、ばたばた暴れて!”
女の子も困ったようす。
その横をジャーマンシェパードの男の子が歩いています。
「ゆう~。いうこと聞かないとだめなのだ~!」
そして、そのとなりには、ラフコリーの男の子。
「ゆうお兄ちゃん、いい子にするなの~。」
「ライナっちも風太っちも黙ってるでち!帰りたくないでち~!」
どうやら三人のワンコは、「にんげん」の女の子のおうちのワンコのようですね。
朝早くからのお散歩を終えて、今、帰ってきたようです。
“じゃあ、いい子でお留守番、頼んだわよ!”
「にんげん」の女の子はそう言って、「じどうしゃ」に乗って「おしごと」に出かけていきました。
お留守番はジャーマンシェパードのライナ君とシェルティのゆう君、そしてラフコリーの風太君です。
「あ~ぁ、行っちゃったのだ。」
「毎日、『おしごと』があって大変でちね。」
「何だかさびしいなの~。」
お留守番の間、三人のワンコはしばらくおしゃべりを楽しんでいます。

「だけど、何でいつもめぐたんを困らせるのだ?ゆう。」
「にんげん」の女の子の名前は「めぐたん」というのですね。
「別に…、困らせているつもりはないでちよ~。」
「だけど、いつもお散歩の帰りにはだだをこねるし、いたずらするし、どこかに行っちゃうし…。」
「いつもじゃないでち!たま~にでち!」
「でも、困らせていることにはかわりはないのだ。めぐたんがかわいそうなのだ。ぼくより小さくて細い体なのに毎日お散歩に連れてってくれるし、いろいろお世話もしてくれているのだから、感謝するのだ!」
「その通りなの~。」
すると、ゆう君がプンスカプンスカ怒り出しました。
「感謝してるでちよ!まるでぼくが悪魔みたいじゃないでちか!」
「ご、ごめん、ごめんなのだ、そんなに怒らないでほしいのだ~。」
と、今度はゆう君、少しさびしそうに話し始めました。
「ちょ、ちょっとやきもちをやいているのでち…。」
「誰になのだ?」
「ライナっちと風太っちに、でち!」
「ぼ、ぼくになのか~?」
「ぼくにもなの~?」
「そうでち。二人ともぼくより体が大きくて目立つし、ぼくより足が速いし、ぼくより強いし…。」
「ゆうたん、それはしかたがないのだ…。」
「それだけじゃないでち!ライナっちはちっちゃい生き物を見つけると、ダーッて走っていって捕まえようとして、そのくせ、ケガをして帰ってきて、めぐたんを心配させてばかりいるじゃないでちか!」
「…!」
ライナ君、黙っちゃいましたよ?
「風太っちも、最近きたばかりから、めぐたんはずっと風太っちにかかりっきりでち。やきもちも焼きたくなるでち。」
それを聞いて、風太君もすまなさそうな顔をしてますよ?
そうそう、風太君は最近「めぐたん」に引き取られたばかり。
しつけの時間もあって、「めぐたん」は風太君と寄りそっている時間が長いんです。
「そのうえ二人とも、時々めぐたんの目を盗んで、ぼくのおやつを横取りするし…。」
「わ、わかった!わかったのだ!ごめんなのだ~!」
「ごめんなさいなの~!」
「…だから…、だから、めぐたんに時々ぼくだけのことを見ていてほしくって、いたずらしちゃうでちよ~。」
「そうだったのか~…!」
「そうなの~…。」
「わかってくれたでちか?」
「うん、納得なのだ!」
「わかりましたなの~。」
「だったら、ライナっちは、もうちっちゃな生き物を追いかけないと約束するでち!」
「そ、それは…、ぼくの血が騒ぐからなのだ。それだけはやめられないのだ~!」
おやおや、これはまた、解決には時間がかかりそうですね。

お昼も過ぎて、お日様も西にかたむき始めました。
三人はひなたぼっこをしながら、まだおしゃべりを続けているようです。
「でも、めぐたんは本当にやさしい『にんげん』でちね。」
「うん!毎日『おしごと』でいそがしいのに、いつもお散歩を欠かさないし、お世話もいっぱいしてくれるし、とてもやさしい『にんげん』なのだ。ぼくらにとって、大切な『おかあさん』なのだ。」
「『おかあさん』…なの~?」
「うん、ぼくがこのおうちにきたのは、三才になってからなのだ。それまでずっとひとりぼっちで…。」
「さびしかったでちか?…ぼくも、ライナっちと少し遅れてこのおうちにきたけど、それまで本当にさびしかったでち…。気持ちはわかるでち。」
「最初はどんなおうちかわからなくって、ビクビクしてたのだ。でも…、でも、めぐたんはぼくをやさしく抱きしめてくれたのだ。」
「…ぼくもそうだったでちよ。」
「…ぼくもなの~。」
「ぼくの体って、他のワンコたちより大きいから、だいたいの『にんげん』はこわがって近寄らないのに…、めぐたんはギュギュッて抱きしめてくれた…。あの時、『あ、おかあさんとおんなじた!』と思ったのだ!」
「どうしてでちか?」
「ぼくがまだちっちゃかった時、いつもおかあさんの胸の中で甘えていたのだ。あったかくて、やさしくって、とても気持ちがよかったのだ。でも、いつの間にかおかあさんから離されて、それからずっとずっと、そのあったかくて、やさしくって、気持ちのいい感じを忘れていたのだ。でも、めぐたんと出会って、めぐたんが抱きしめてくれて、ぼくはその時の気持ちのよさを思い出したのだ!」
「ぼくもおんなじでち…!そうか、そうでちね!めぐたんは、ぼくたちのやさしいやさしい『おかあさん』でちね!」
「あったかくて、ステキなおかあさん。それがめぐたんなの~!」
ひなたぼっこのぬくもりの中、三人のおしゃべりは続きます。
やさしい「おかあさん」の「めぐたん」のことを、いつまでもいつまでも、うれしそうにおしゃべりしています。
お日様もニコニコして三人のおしゃべりを聞いています。
小鳥たちも静かに三人のおしゃべりを聞いています。
三人の周りは、みんな幸せそうにほほえんでいました。

「うん?この音は…、めぐたんの『じどうしゃ』なのだ!」
「帰ってきたでちね!やった~!きゃぴ~!」
お日様が姿を消してしばらくすると、「めぐたん」は大急ぎで帰ってきました。
あわててバタバタと「じどうしゃ」から降りてきためぐたん。
「めぐたん」も、三人に会いたくって会いたくってたまらなかったようです。
“ただいま~、息子たち~!さ~ぁ、お散歩に行くわよ~!でも、ライナは小動物との追いかけっこ禁止!ゆうはいたずら禁止だからね~!風太はしつけの時間よ~!”
めぐたんの、その言葉を聞いて、三人はクスクス笑っています。
“なぁに?何をニヤニヤ笑ってるの?”
「別に~、なのだ!」
「別に~、でち!」
「別に~。なの~!」
三人はうれしそうにしっぽをふって、「めぐたん」に飛びつきました。

みんな、幸せですね…!




おはなしを聞き終えたミカド君。
「風さん。ステキなおはなしをありがとう!」
すると、サクヤちゃんが気がつきました。
「ミカドお兄ちゃん?誰とおはなししているでちゅか?」
風さんは初めてサクヤちゃんに声をかけました。
「あら?あなたがサクヤちゃんね。ミカド君たちから聞いているわ。かわいいお嬢ちゃんね!」
サクヤちゃんはびっくりです!
だって、風さんと初めておはなししたのですから。
「サクヤ。風さんはいろいろなことを教えてくれるんだよ。」
「本当?だったら、ワタチにもたくさん聞かせて!」
「今夜は遅いからね。またいつかね。」
「約束でちゅよ!」
「ええ、約束。」
風さんは、また新しいおはなしを見つけに、遠くに吹いていきました。
サクヤちゃんの目は、初めての出会いと、初めての約束に、胸をときめかせていました。

























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この記事へのコメント

  • koji

    お久しぶりに風さんのお話を聞くことができました(^^)。

    めぐたんさんの3ワンコが本当にお話しているみたい。

    楽しくて、暖かかったですよ。
    2011年02月25日 18:04
  • koji様>
    コメント、ありがとうございます。
    犬たちもネコたちもお話ししていると思いますよ。
    そういうことを想像するのが楽しくって仕方がありません。
    2011年02月25日 18:12

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