風の子守唄 (改訂版) ~ つぶやきシリーズ ~

皆さん、こんばんは。

今回は、以前、1日に何回かに分けてこのブログに載せた
「風の子守唄」
を一挙掲載します。
年間約31万頭もの犬・猫などのペットが、殺処分されている現在。
でも、九州は熊本市では、殺処分0を目指して、以下のように努力しています。
With animals ~愛の反対は憎しみではなく、無関心~」というブログの記事で教えていただきました。


大切なのは、飼い主のマナーの徹底。
そして、思いもせず殺されてしまう小さな命の声を聞くこと。

僕の文章が、その一助になるかどうかは分かりませんが…。

前回とは部分的に改訂してあります。
前回では、誤字脱字もありましたので。
話の筋は変わりません。
よろしければ、改めてお読みください。

かなりの長文ですので、飽きたらお読みにならなくてけっこうですので。



風 の 子 守 唄

~ 1日目 ~

どうして?
なぜ「さようなら」なの?
おいていかないで!
1人にしないで!
“『さとおや』が見つからない”って、どういうこと?
“『しごと』がなくなった”って、ぼくにどんな関係があるの?
“『ひっこしさき』はペットはだめ”って、何のことかわからない。
それって、ぼくがいけないの?
だったら、ごめんなさい!ごめんなさい!
おいていかないで!

あぁ、「じどうしゃ」が行っちゃった!
ひとりぼっちはいやだよ~!
「しょくいん」っていう「にんげん」が、冷たい部屋にぼくを連れていこうとする。
ぼくはどうなるの?
ぼくの家族は、お母さんは、お父さんは、子どもたちは、どこへ行ってしまったの?
帰ってきて!
帰ってきてくれるよね?
さびしい、さびしいよ~!
「うるさいねぇ、静かにおしよ。」
ぼくの後ろから声がした。
おばあさんの犬だ。
「さびしいのは、何もあんたばかりじゃないんだよ。」
よく見ると、他にも仲間が何人かいた。
「だって、家族に置いていかれたんだよ、さびしいよ…」
「ここにいる、みんなもそうなんだよ。さっきから、あんたと同じことばかりキャンキャン言っているんだ。私はもう聞き飽きたよ。」
「みんな家族においていかれたの?」
「ああ、そうらしいねえ。私もそうなのさ。まあ、私は年寄りで先も短いから、『にんげん』の足手まといになったのさ。」
「あしでまとい?」
「邪魔者ってことだよ。」
「そんな!ぼく、いい子にしてたよ。でも、でも…、悪いことしてたのかなぁ…。」
「さあね、私はとしよりでヨボヨボになっちまったからね。おうちの『にんげん』どもも、それでずいぶんと手を焼いていたようだったし…。きっと捨てられちまったんだねぇ…。」
「そんなこと!だったら、ぼくもここに、『あいごせんたー』に捨てられたっていうの?」
「あんた、さっきキャンキャン言ってただろ?ほら、『しごとがなくなった』とか何とか。あんたを世話する余裕が、あんたの家族にはなくなっちまったのさ。」
そんなばかな!
ぼくたちは家族だったんだ。
今まで3年もいっしょに仲良く暮らしていたんだ。
家族が家族を捨てるなんて、僕には考えられない。
きっと、ぼくが悪いことをしたんだ。
ここでいい子にしていれば、そうしたら、絶対、絶対に迎えにきてくれるはずさ。
泣きたい!
ううん、でも我慢しよう!
いい子にして吠えていなければ、きっときっと…。

他の子とも話をしてみた。
でも、みんな、吠えて疲れ切って、そして、さびしくってうずくまっているだけ。
わかったのは、今日、家族と離ればなれになったっていうことだけ。
だとしたら、ぼくも捨てられたの?
そんなこと…、そんなことあるものか!

すると、さっきの「しょくいん」っていう「にんげん」が入ってきて、ぼくらに水やご飯をくれた。
とても優しい目をした「にんげん」だった。
でも、とてもさびしそうな目をした「にんげん」だった。
“お前たち、しっかりお食べよ。さびしいだろうけど、つらいだろうけど、もしかしたら、明日には新しい『さとおや』がきてくれるかもしれない。希望を、少しでも希望を持っていような。”
何を言っているんだろう?
「さとおや」って何だろう?
“俺は、ここの『しょくいん』だから、ギリギリまでお前たちのめんどうを見てあげよう。ギリギリまでお前たちのことを考えてやるからな!”
優しい、あったかい手でなでられた。
みんな、みんな、「しょくいん」という「にんげん」に頭をなでてもらった。
「しょくいん」さんの目をよく見ると、うっすら涙が浮かんでいた。

「いつまでそんなところに座っているんだい?こっちへおいで。もう夜だよ。みんなでかたまって寝ていればあったかいだろ?」
おばあさんの犬が声をかけてくれた。
ぼくは、この部屋の入り口の前で、家族が迎えにきてくれるのをジッと待っていたんだ。
「きっと、きっと迎えにくるもん!」
「だからね、もう夜だろ?おうちの『にんげん』がこんな時間にくるもんかい。」
「…。」
「だから、さぁ、こちらへおいでな。みんなでいっしょにあったかくなろうじゃないの。」
おばあさんとぼく、そしてあと4人の犬たちは、一つにかたまった。
「ほら、あったかいだろ。今日は私の胸でおやすみ。」
あったかかった。
とても、あったかかった。
そうしたら、また涙が出てきちゃった。
明日にはお迎えにきてもらえるかなぁ?
いい子にしていれば、きっときてくれるよね…。

何だか眠くなってきた。
泣き疲れて、吠え疲れて、もう本当に今日はいろいろなことがあったから…。
みんなスヤスヤ眠っていると、初めて外の音が聞こえた。
風さんが歌っている。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  明日はいいことありますように
  明日は誰かがきてくれますように
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れたろう
  今日はぐっすりおやすみなさい~♪

風さんが子守唄を歌ってくれているんだ。
ありがとう、風さん。

おやすみなさい。

明日には、きっとお迎えにきてもらえるよね…。



~ 2日目 ~

目が覚めた。
昨日のことは夢…?
悪い夢…?
……夢じゃなかった…。
「あいごせんたー」の、あのお部屋だ。
おばあさんもいる。
他の子もいる。
昨日はおうちの人がお迎えにきてくれなかった。
でも、でも、今日はきっとくる!
きっとくるんだ!
入り口の前で、おとなしくお座りして待っているんだ。
いい子にしていれば、きっときてくれる!

「またそんなところでお座りかい?いくら待ってもおうちの『にんげん』なんかきやしないよ。」
「そんなことないもん!」
「まぁ、あんたの勝手だけどね。」

「しょくいん」さんが、朝のご飯とお水を持ってきてくれた。
やっぱり優しそうで悲しそうな目をしていた。
なんでそんな目をしているの?
ぼくはご飯を食べながら、「しょくいん」さんの目ばかりが気になっていた。

おばあさんは、ご飯を食べなかった。
「どうしたの?食べないと大変だよ?」
「私はね、もう食べる気がしないんだよ。何日も前からね。食事がのどを通らなくってね。いいから、あんたたちでお食べなさい。」
「うん…。でも、一口くらい…。」
「大丈夫だよ。さぁ、いいから。」
おばあさんが心配だった。
何か元気がなくて、少しも動かない。
おばあさん、本当に大丈夫なのかなぁ…?

朝ご飯の後、ぼくたちは隣のお部屋に移された。
移される時に気がついた。
ぼくたちのお部屋の奥にはいくつもお部屋があって、そこにはぼくたちの仲間がたくさんいるんだって。
みんな、悲しそうな声で泣いている。
さびしそうな声で泣いている。
みんなもぼくと同じかなぁ?
おうちの人を待っているのかなぁ?
なんでお迎えにきてくれないんだろう?
みんな、みんな、こんなに待っているのに…。

お昼が過ぎた頃、「にんげん」がきた!
お迎えにきてくれたんだ!
……違う、違う人たちだった。
“お前たち、『あいごだんたい』の人が、『さとおや』になってくれる人を連れてきたぞ!”
「しょくいん」さんは、少しうれしそうな顔をしてそう言った。
「あいごだんたい」という「にんげん」たちと、優しそうな「にんげん」の女の人が2人やってきた。
“どの子もかわいいのにね。かわいそうに。”
“でも、連れていけるのは、うちでは1匹だけなの。ごめんね。”
「あいごだんたい」の人が連れてきた女の人は、白い小さな女の子を抱き上げた。
“この子にします。他の子もかわいいけれど。でも、1匹しかうちでは無理なので…。”
白い小さな女の子は叫んでいた。
「イヤ、イヤ、おうちの『にんげん』じゃない!何なの、この『にんげん』たちは?またわたしをどこかに連れていくの?おうちの『にんげん』はどうしてきてくれないの?」
抱き上げられたまま、お部屋の外につれていかれちゃった…。
残ったぼくたちを見て、「しょくいん」さんが、また悲しそうな目になった。
“ごめんな、明日は。きっと明日は…!”
なんで謝るの?
ぼくはきっと悪い子だったからここにいるんだよ。
謝らなきゃいけないのは、ぼくなんだ。
ねえ、いい子にしているから、はやくおうちの「にんげん」をつれてきて!
ぼくは泣きそうになるのをグッとこらえたんだ。

「ギャン!ギャン!キャイン!」
突然、苦しそうな声が聞こえた!
何?
何があったの?
奥の部屋の方だ!
でも…、すぐに聞こえなくなった…。
しばらくすると、何人かの「しょくいん」さんが泣きながら、ぼくらのお部屋の前を通った。
“ちくしょう!何で、何でだよ…?”
そんなことをぼそぼそつぶやいていた。
ぼくは入り口に飛びついて
「ねえ!なにがあったの?ねえ!」
でも、ぼくの言葉は通じなかった。
ぼくは「しょくいん」さんの涙のわけが気になって気になってしかたがないんだ。

今日もおうちの人はきてくれなかった。
ご飯を食べて、お水を飲んで、そして入り口のところでお座りをして待ち続けたんだ。
「またそんなところにいて。寒いだろ?もう、こっちへおいでなさいな。」
「おばあさん…、今日もご飯を食べてないよ?大丈夫なの?」
「ああ、もう食べる気も何もないんだよ。動くのさえできなくってね。歳だからねぇ。」
「ねえ、きっとおうちの人がくるよ。だから、ご飯を食べてよ。」
「優しい子だねぇ。本当に。こんなに優しい子を何で…?」
「…おばあさん?泣いているの?」
「ああ、だんだん目が見えなくなってきたけど、涙は出るものなんだねぇ。」
「…おばあさん!」
僕はおばあさんの胸の中に潜り込んだ。
あったかくて気持ちがいい。
みんなもかたまって、気持ちよさそうに寝ていた。

辺りが静かになった。
そしたら、また風さんの声が聞こえた。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  明日こそいいことありますように
  明日こそ誰かがきてくれますように
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れたろう
  今日はぐっすりおやすみなさい~♪

また、風さんが子守唄を歌ってくれている。
ありがとう、風さん。

おやすみなさい。

明日こそ、きっとお迎えにきてもらえるよね…。



~ 3日目 ~

また、朝がきた。
やっぱり夢じゃないんだね。
僕は、おいていかれたんだね。
ううん、違う!
お出かけからまだ帰ってこないだけなんだ。
きっと、今日は迎えにきてくれるんだ!
ねえ、おばあさん。
…おばあさん?
ねえ、ねえってば!

おばあさん、動かない。
息をしていない。
昨日、あんなにあったかかったのに、どうして、どうして冷たくなってしまったの?
どうして動いてくれないの?
どうして優しい言葉をかけてくれないの?
ねえ、ねえ、おばあさん…!

“かわいそうに。たった3日じゃないか。たった3日、家に置いてあげれば、みんなに看取られて旅立つことができたのに…!さびしかったろうなぁ、つらかったろうなぁ、ごめんな、本当にごめんな。あの時、もっと強く説得していればよかったんだ!”
「しょくいん」さんは、ボロボロ涙を流している。
悔しそうだった。
悲しそうだった。
何で自分を責めているの?
“今日はお前たち1人でも多く、「さとおや」ができるといいよな。俺もがんばるから!”

隣の部屋に移った。
一番奥の部屋が気になってしかたがない。
ぼくらが隣に移るってことは、前にこのお部屋にいた子たちは、そのまた隣の部屋にいくんだよね?
だったら、一番奥のお部屋の子たちは、次の日にはどうなっているの?
おうちの人がお迎えにきてくれたのかなぁ?
それとも、またどこかに連れていかれちゃうのかなぁ?
いったい、どうなっているんだろう…?

今日も「あいごだんたい」の「にんげん」たちと、「さとおや」という「にんげん」たちが来た。
ぼくらの前のお部屋からは、2人連れていかれた。
ぼくらのお部屋からも、今日は茶色い男の子が連れていかれた。
昨日とおんなじだよ。
みんな、泣いて叫んでいる。
「おうちの人じゃない!どこへ、どこへ連れていくの?助けて!だれか助けて!」
ぼくは耳をふさいだんだ。
こわくてこわくて、僕もだれか知らない「にんげん」にどこかに連れていかれちゃうのかな?
そして、やっぱり昨日とおんなじ。
「しょくいん」さんが、僕らに謝っている。
“ごめんな、ごめんよ…”
ぼくたちが悪いんじゃないの?
ねえ、おうちの人に伝えて!
ぼく、いい子にしているって!
そうすれば、そうすれば、きっと…!

「ギャン、ギャン!グェッ…!」
ああ、またあの苦しそうな声だ。
そして、すぐに聞こえなくなる。
そしてまた、「しょくいん」さんが泣いている。
一番奥のお部屋の方。
何が起きているの?
何があったの?

夜になった。
残ったのは、僕も含めて3人。
かたまって、あったかくして寝ていた。
そして、初めてヒソヒソおはなしをした。
「ねえ、おばあさん、どうしちゃったのかしら?」
「わからない、動かなくなっちゃったし、息もしてなかった。」
「僕たちどうなるのかなぁ?」
みんな思っていることはおんなじだった。
「しょくいん」さんがなぜ泣くのだろう、「あいごだんたい」とか「さとおや」って何のことだろう、あの悲しい叫び声はいったい何だろう、一番奥の部屋に行ってしまうのがこわい…。
3人ともおんなじ。
「ねぇ、いい子にしていれば、きっとおうちの『にんげん』が迎えにきてくれるんだよね?」
「でも、もう3日よ。だとしたら、おうちの『にんげん』は何をしているの?」
「もうこないって、あきらめた方がいいんじゃないか?」
そんなことあるもんか!
ぼくはあきらめないぞ!
ぼくは、ぼくはおうちの「にんげん」を信じている!

かたまっておはなしをしているうちに、ぼくたちは眠くなった。
辺りが静かになった頃、また風さんが歌ってくれた…。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  だんだん明日がくることが
  だんだん明日がこわくなる
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れたろう
  今日はぐっすりおやすみなさい~♪

ありがとう、風さん。
でも、明日がだんだんこわくなるって、どういうこと?
風さんの歌声も悲しそうだったよ。
風さん、教えて!
ぼくたちは、どうなるの?

…風さんは、何も言わずに、さびしそうにどこかに吹いていってしまった。

…おやすみなさい。

明日こそ、そう、明日こそ、きっとお迎えにきてもらえるよね…。



~ その前の晩 ~

あれから何日過ぎたのだろう?
もう、待ちくたびれちゃった。
心の中はボロボロだよ。
おんなじことの繰り返し。
お部屋が隣に移る。
「しょくいん」さんは謝ってばかり。
「あいごだんたい」の「にんげん」や「さとおや」という人はくるけれど、もう、ぼくらのいるような奥のお部屋まではやってこない。
たまにのぞきにくるけれど、もうだれも連れていかなくなった。
ぼくたちは3人ぼっち。
そして、あの怖い怖い叫び声が、日に日に近くに聞こえてくる。
だから、もう何て叫んでいるか、はっきり聞き取れるんだ。
「助けて!」
だけど、すぐに静かになる。
その後のことはわからない。
いつものように、「しょくいん」さんたちが泣いているだけ。

でも、ぼくは、他の2人がどう言ったって、入り口でお座りして待ってるんだ。
いい子にして待ってるんだ。
もう、だれにも吠えないよ。
わがままだって言ってない。
静かにする時は、ちゃんと静かにできるんだ。
「しょくいん」さんに頭をなでてもらえて、それはとてもあったかくて、だから素直に甘えてるんだ。

ああ、だけど…。
明日は一番奥のお部屋に移るんだ。
ぼくたちはどうなるんだろう?
「助けて!」って、何が起きているんだろう?
こわくてこわくて、みんないっしょにかたまっているけれど、だれも眠れないんだ。

辺りが静かになると、また、風さんが歌い出した。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  明日は私がお見送り
  神様が必ず待っているよ
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れてもいい
  最後にぐっすりおやすみなさい~♪

今までで一番悲しい歌声だった。
ぼくは、大きな声で風さんを呼び止めた。
「風さん…!何か知ってるの?明日、ぼくたちはどうなるの?!」
「………。」
「風さん、黙ってないで何か言ってよ!」
「……ぼうや、そんなことは聞かないでおくれ。」
「なぜ?なぜなの?おうちの『にんげん』もきてくれない。いい子にしてるのにきてくれない。それなのに、ぼくたちも明日『助けて!』って叫ぶの?」
「……ぼうや、そんなことは聞かないでおくれ。」
「……だったら、一つだけ教えて。あのおばあさんはどこに行ったの?」
「ぼうや、きっと、きっとね……、おばあさんはお前たちを待っているよ。」
「ぼくたちを待ってる?」
「ちゃんと送ってあげるから。おばあさんのところに送ってあげるから。だから、もう悲しいことは聞かないでおくれ。」
「……風さん。」
ぼくは何が何だかわからなかった。
だけど、風さんの悲しそうな声を聞いて、もう何も聞くことができなかった。
風さんは通り過ぎていってしまった。
ぼくは、ぼくたち3人は、冷たくなりそうな心を一生懸命我慢して、泣き出しそうなのを一生懸命我慢して、一つに小さくかたまった。
「うっう…。」
だけど、女の子が泣き出した。
「大丈夫かい?」
「もう、だめ…。泣いてもいいかしら……。」
「……泣いちゃおう、泣いちゃってもいいよ、きっと。」
「怒られたっていいよ、明日は一番奥のお部屋なんだし。」
こわくてこわくて、それを少しでも紛らわせたくて、ぼくたちは泣いた。
思いっきり泣いた。
だれも怒らなかった。
だれにも怒られなかった。
泣いて、泣いて、泣き疲れて…。

ぼくたちはいつの間にか眠ってしまったんだ…。



~ その日 ~

とうとう一番奥のお部屋に移された。
「しょくいん」さんは、もう何も言わなかった。
ただ、とても苦しそうな顔だった。
つらそうな顔だった。

「あいごだんたい」の「にんげん」たちがきているようだけど、ぼくらのお部屋まではだれもこなかった。
だけど、ぼくは、おうちの「にんげん」を信じてるんだ。
今日も入り口のところでお座りをして、お行儀よく待っている。
きっとくる、きてくれるはずだ!

だって、ぼくたちは家族だったんだもん!

……だけど、こなかった。


あの叫び声が聞こえた、あの時間が近づいてきた。
何が起こるんだろう?
何をされるんだろう?
ぼくたちは、もうどうしていいか、わからなかった。
僕はお座りをして待つしかなかった。
女の子は泣いている。
男の子は、部屋の中をうろうろしている。
待つんだ、ぼくは、ぼくだけは待つんだ!

“さぁ、こっちへお入り。”
「しょくいん」さんたちが、大きな鉄でできたカゴを用意して、ぼくたちに入るように言っている。
ぼくはいい子だ!
ちゃんと言うことを聞くんだ!
こわかったけど、一番最初に入った。
女の子と男の子は、しばらくだだをこねていたけれど、最後は「しょくいん」さんたちにカゴに入れられた。
「どうなるのかしら?」
「もう、こわくてしかたがないよ!」
みんなガタガタ震えている。
ぼくだって震えが止まらないんだ。
あの叫び声、「助けて!」の声。
ぼくらも何かされるのかな?
助けてって叫ぶようなことをされるのかな?

“ガス室の準備、できました。”
「しょくいん」さんがそう言うと、ぼくらが入ったカゴが静かに動き出した。
「がすしつ」って何?
ぼくたちは、その「がすしつ」に入れられるの?
あの、真っ暗なお部屋がそうなの?
真っ暗なお部屋に向かって、カゴが動いている!
ねえ、どこへ連れていくの?
あれが「がすしつ」なの?
あそこで何が起こるの!?
ねえ、ねえ!
それまでいい子にしていたけれど、もう我慢できなくなった。
叫んだ!
思いっきり叫んだ!
「助けて!」

「がすしつ」の扉が閉まっちゃった!
「がすしつ」に閉じ込められちゃった!
ああ、ごめんなさい!
最後にいい子にしなかったから、こんなことになっちゃったんだ!
ごめんなさい!
ごめんなさい!
もう、悪い子にしません!
いい子にします!
本当にいい子にします!
何?
何のにおい?
シューッて、へんな空気が流れてきた!
変なにおい!
苦しい…、苦しいよ…!
助けてっ!
助けてっ!
ごめんなさい!
本当にごめんなさい!
いい子にします!
あぁ、息が苦しい!
女の子も男の子も、バタッと倒れちゃった!
何でこんなことするの?
悪い子だから?
直すから!
いい子になるから!

あ、小さな窓から「しょくいん」さんたちが泣いて見ている。
手を合わせている。

ねぇ、助けて!

助け…て……!

……苦しい…!

ごめんなさい……。

ごめんな……さ……。

いい…子に………。


ごめ…ん…………。

……………………。

…………………。

………………。

……………。

…………。

………。

……。

…。

‥。







「……先輩…。この子たち、天国に行けたかな?」
「ああ、行ったとも。この子らにゃあ、何の罪もないんだ。」
「もう、もう、苦しいっすよ、俺。こんな毎日…。」
「ああ、俺もだ。だけどな、仕事なんだ。悔しいけれど、これが俺たちの仕事なんだ。毎日ボロボロ泣きながら、それでも涙は涸れやしねぇ。そんな仕事をしているんだ。」
「こんなこと、こんなことしていいんですかねぇ?」
「悪いに決まってるだろ!」
「……!」
「……だけどな、捨てる人間がいるかぎり、この仕事が続くんだ。放っておいて野犬だらけになったら、この子らにも、他の動物にも、それに人間にも、たくさん迷惑がかかるんだ。生態系が乱れたり、この子らが望みもしないのに病気にでも感染したら、それこそ狂犬病なんかになっちまったら、犬だって、他の動物だって、人間だって、えらいことになっちまうんだ……。」
「だからって、それを、この子たちの生き死にを、俺たちが決めていいんですか?」
「しかたがねぇだろ!だったら、こいつらまとめて、これからくる子らもまとめて、お前が飼えるのか?飼えっこないだろうよ。ここでだって、税金でやってるんだ。もし、全部生かしておくなら生かしてやりてぇさ。でも、エサ代とか世話代とか、他の手間賃とか、だれが出してくれるんだよ?」
「………。」
「……俺たちは地獄に行けばいいんだ。その代わり、この子たちが天国に行ってくれればな……。そう思うしかねぇだろ?」
「……はい、先輩。俺……、それだったら進んで地獄に行きますよ!」
「あぁ、俺もだ。……さあ、この子たちを荼毘に付してやろうじゃないか。丁寧にな。」



~ 風の子守唄 ~

ああ、とうとう「けむり」になってしまったんだね。
ごめんね、何もしてあげられなくて。
「あいごだんたい」やら「さとおや」やら、何度も背中を押したのだけれど、お前たちには目がいかなかったんだね。
さぁ、私にお乗り。
いっしょに行きましょうね。
あのおばあさんも待っているわよ。
高く
高く
どこまでも高く、
私が連れてってあげようね。

ほら、天国の入り口が見えてきただろう。

もう、苦しまなくてもいいんだよ。

もう泣かなくてもいいんだよ。
そこでゆっくりおやすみなさい。

にっこり笑っておやすみなさい。


おばあさんが

ね、

見えただろ……?







31万頭。
1日あたり単純計算で、850頭弱が殺処分されていることになります。

転居で犬が飼えなくなった
なつかないから仕方がない
仕事がなくなって、とてもペットどころではない
子犬が生まれたが、どう処分していいか分からない
里親捜しが思うようにいかない
捨て犬、捨て猫…


「にんげん」の都合で、小さな命の灯を消してしまうことは、断じてあってはならない。
自治体の努力も必要でしょうが、僕ら「にんげん」1人1人が、命に対する責任の重大さを理解する必要がありますね。


さて、これが本になるかどうかは、まだ先の話です。
本になったら、まずは僕が住む街の小・中学校すべてに1冊ずつ置いてもらえるように努力します。


それよりも、こんな僕の作り話が
「昔は、こんなこともあったんだよ」
みたいになってくれれば。
そんな日が1日でも早く来ることを望みたいですね。



それでは、明日が皆さんにとってぬくもりにあふれた1日でありますように。


おやすみなさい。











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この記事へのコメント

  • めぐたん

    年間約31万頭もの犬・猫などのペットが、殺処分されているのですね。
    多さに驚きました。とてもショックです。
    動画、衝撃的ですね。
    今の社会は動物の命よりも利益追求を優先させているように思えます。
    また繁殖制限も大切ですよね。
    そして最後まで責任を持って飼養すること。
    あたりまえのことですよね。
    一人ひとりが守れば決して殺処分数ゼロに近づくことは難しいことではないと思います。
    2009年12月05日 19:19
  • めぐたん様>
    コメント、ありがとうございます。
    また、長文につきあっていただき、感謝します。
    31万頭という数には、「にんげん」というもの無力さ、無責任さを感じます。利益の追求のみで、小さな命が左右されるということは悲しいですね。
    少しずつ声を広げて、みんなで小さな命を守れるように努めたいと思います。
    2009年12月05日 21:08
  • oriver

    かわいいお洋服を着せたり専用レストランができたり、家族同様に可愛がる映像を見る限り今日のお話は無縁のような気がしますが、これが現実・・・勝手なものですネ。
    どういう経緯でこうなるのかは色々でしょうケド、とてもとても残念です。
    2009年12月06日 01:34
  • タフィー104

    本当に悲しい事だと思います。
    先進国といいながら、日本はこういった対応がとても遅れてますよ。
    処分すればいいという事がおかしい・・
    単に可愛いから、ブームだからで生き物を飼っちゃいけないですよ。
    それに乗じて、利益を上げる事を目的とする人が多数あり、余計に増えるんでしょうね。
    こういう子を「出さない」為に、涅さんのように、こつこつと訴え続ける事は大事な事だと思います。
    すぐに結果が出ないけど、「何か」には繋がりますよ!
    2009年12月06日 05:44
  • oriver様>
    コメント、ありがとうございます。
    また長文にお付き合いいただき、感謝します。
    ペットたちの可哀想な最期には、憤りを感じます。なぜなら、最初にしても、母親から離されて各家庭に連れていかれるのですから。母親からすれば、誘拐されたに等しいとも思います。ですから、最期まで面倒を見るというのが飼い主の務め、責任です。決して悲しい最期にはさせないように、皆で何とかしていきたいと強く願います。
    2009年12月06日 07:35
  • タフィー104様>
    コメント、ありがとうございます。
    殺処分を禁じている国もあるそうです。そういった意味では先進国とは言えないでしょうね。だから、飼い主のモラルやマナーを徹底していくことが大切ですね。小さな訴えですが、少しずつ前に進めば、と思っています。
    2009年12月06日 07:38
  • momo

    人知れず命を絶たれてしまう
    犬や猫たちの叫びを代弁して下さって
    ありがとうございます<(_ _)>

    地元の愛護センターで会った犬たちの
    悲しげな目が蘇ってきました。
    悲痛な鳴き声が、聞こえて来ました。

    大変かも知れませんが、頑張って本にして下さい。
    全国の小中学校で、「命の授業」の教材にして欲しいです。

    伝えること、知って貰うことが殺処分を減らすために
    一番重要なことだと、私は思っています。
    ほんとうに、ありがとうございました。

    2009年12月06日 12:35
  • momo様>
    コメント、ありがとうございます。
    本当にいつになるかは分かりません。でも、こんな悲しい事実を知らない人たちも多い。少しでも役に立てるなら、その思いでいます。
    また、今後ともアドバイスをお願いします。
    2009年12月06日 12:58

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