サクラの木のおはなし ~つぶやきシリーズ~




サクラの木のおはなし

ヒナちゃんがお父さんに連れられて、公園までお散歩にやってきました。
今日も、公園で一休み。
ヒナちゃんは、サクラの木のおばさんを見つけました。
「サクラのおばさん、こんにちは!」
「あら、かわいいワンちゃん。こんにちは。」
ヒナちゃんは自己紹介。
「わたし、ヒナっていうの。この近くのおうちに住んでいるのよ。」
「知ってるわよ。ヒナちゃんね。みんなから聞いていますとも。」
ヒナちゃんはそれを聞いて別に驚きませんでした。
だって、この前の公園の大きな木のおじさんも、また、川の辺りの大地さんも、自分たちのことを知っていたのですから。
「風さんに聞いたの?それともスズメの涼歌かしら?」
「ええ、そうね。私にはお友だちがいっぱいいるわ。風さんも、涼歌ちゃんって言うのね、あのスズメさんは、他にもいろいろな小鳥さんや虫さんたちも、みんなお友だち。だから、この辺りで知らないことはないし、遠いところのおはなしも聞いているわよ。」
「お友だちがいっぱいなんて、すてきね。」
「そうね。わたしたち木は動けないからねぇ、そうやっていろいろなおはなしを聞いて、楽しんでいるのよ。」

ヒナちゃんは、最近寒くなってきて、木々の葉っぱが落ちていることが気になっていました。
「寒くなると、葉っぱが落ちちゃって寒そうね。サクラのおばさんも、春はとてもきれいなお花をたくさん咲かせて、夏はあんなにたくさん緑の葉っぱがいっぱいだったのに、寒くなってくると元気がなくなっちゃうの?」
すると、サクラのおばさんは、風さんにそよぎながら笑い出しました。
「ウフフフッ、アハハッ。そう見えちゃうかしら?実はそうじゃないのよ。意外と元気なの!」
「え?だって、葉っぱが落ちちゃうと寒いだろうし…。」
「ええ、寒いわよ。だから、元気にがんばるの。」
いったいどういうことでしょう?
ヒナちゃんにはさっぱり分かりません。

「さっき、春にはきれいなお花をたくさん咲かせてって言ってくれたわね。ありがとう。ところで、あの時の色を覚えているかしら?」
「えっと、薄いピンク?」
「そうね。だったら、その色はいつどこで作っていると思う?」
「…?」
そうですよね。
あの見事なサクラの花は、どうやって咲くのでしょう?
サクラのおばさんは、ヒナちゃんに微笑みかけながら、教えてくれました。
「わたしたちサクラって、春から夏にかけてたくさんの葉っぱを広げているでしょ?あれで、この体の中にいっぱい栄養をたくわえておくんだよ。もちろん、大地さんからもお水や栄養をもらって、寒い冬に備えるんだよ。葉っぱは秋になると枯れ落ちてしまうけれど、私のこの体の中は一生懸命生きているの。」
「葉っぱがなくなっても生きているの?」
「そう、一生懸命ね。そして、この体の中で花の色をたくさん作っているのさ。そして、花を咲かせる準備をしているの。」
「冬の、あんなに寒い時に?大変ね!」
「そうよ、大変よ。ものすごく寒いし、葉っぱからの栄養はもらえない。大地さんからもらえるお水も、夏ほどたくさんないからねぇ。」
「なのに、何で春にはあんなに立派なお花を咲かせるの?」
「大変だからだよ。大変だから、我慢して我慢して、耐えて耐えて耐え抜いて、それだけ我慢して耐え抜いたから、春には思いっきり咲くことができるんだよ。」
「我慢して耐え抜いて?」
「厳しい冬の寒さを我慢して、その中で一生懸命生きているから、春にはあれだけの花を咲かせるんだよ。我慢できなかったら、咲かせることなんてできやしないの。本当に枯れて死んでしまうのさ。」
画像

我慢して、耐え抜いて、一生懸命生きていることで、あんなにきれいなお花になれる。
ヒナちゃんは感動しました。
「わたしたちにも我慢とかできるかしら?」
「あら?あなたたちはもうそれをしたんじゃなくって?」
ヒナちゃんには何のことか分かりません。
サクラの木のおばさんのように、ジッと我慢したことなんて…?
「あなたたち、最初に今のおうちに来た時は、どうだったの?それとも、風さんがウソをついたのかしら?」
「あっ!」
そうでした。
今のおうちに来たばかりの時は、本当のお母さんとの別れがつらくて、泣いて泣いて、でも、いろいろ我慢しているうちに、今の「にんげん」のおうちの家族になれたのでしたね。
「どんな生き物も、いろいろなことに耐えて我慢して、一生懸命生きていて、そして、花を咲かせたり、新しい命を生んだり育てたりしているんだよ。わたしたちサクラばかりが我慢しているわけではないの。」
「それじゃあ、おうちにいるような『にんげん』も?」
「どうだろうね~。それは分からないね。私が知ってるかぎりでは、一番こらえ性のないのが『にんげん』だと思う時もあるわよ。だけど、がんばって我慢して、苦しい時を耐え抜いて、一生懸命生きて花を咲かせている『にんげん』だっているらしいね。」
「そうね。きっとそういう『にんげん』がたくさんいるわね。」

「わたしはね…。」
サクラの木のおばさんがおはなしを続けます。
「春には本当にきれいに咲かせようとがんばっているのさ。それはなぜかっていうとね、ウフッ、『にんげん』の笑った顔が好きだからなんだよ。」
「笑った顔が好き?」
「おもしろいものでね、『にんげん』は、春になると、私の花を見て、にっこりと笑うのさ。とても幸せそうにね。時々、私の根もとの辺りで、どんちゃん騒いでいる『にんげん』もいるけれど、それでもみんながいい顔で笑うんだよ。特に小さい『にんげん』の子どもが、きれいだね~っとか言って、笑っている顔は本当に大好きなんだよ。」
「わたしも!わたしも、おうちの『にんげん』が笑っている顔が好き!大好き!」
「それに、小鳥さんも虫さんもニコニコ笑いながら、私の花のミツを吸いにくるだろ?わたしは、わたしらサクラは、その笑顔の為に精いっぱい咲いているんだよ。」
「だから、どんなに寒い冬でも我慢できるのね。」
「そう、耐え抜いて、一生懸命生きていれば、必ず嬉しいことがやってくる。毎年、毎年、それが楽しみだから、冬はせっせと色づくりのために一生懸命なのさ!」

お父さんが歩き出しました。
ヒナちゃんも、名残惜しそうに歩き始めます。
「サクラのおばさん。」
「なんだい?」
「来年の春、きれいなお花を待っているわね。だから、がんばってね!」
「あら、嬉しいねぇ!ええ、がんばりますよ。寒さなんかに負けてなるものですか。春になったら、とびっきりの笑顔を見せておくれよ!待っているからね。」
「ええ、それじゃあ、さようなら。またおはなしを聞かせてね。」
サクラの木のおばさんは、また風さんに揺すられながら、ヒナちゃんに枝を振っていました。
そして、はらりはらりと数枚の葉っぱが落ちていきました。
サクラの木のおばさんの、冬支度はもう始まっています。




それでは、明日が皆さんにとって実り多き1日でありますように。


おやすみなさい。











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この記事へのコメント

  • めぐたん

    良い生徒さんたちですね(^^)
    私も合唱大好きです。
    明日から2日間文化祭です。
    合唱が一番楽しみなんです。
    毎年、心、打たれて涙が出そうになります。
    さくらの木のお話素敵ですね。
    私も頑張らなくちゃ!
    2009年11月05日 20:38
  • めぐたん様>
    コメント、ありがとうございます。
    合唱って本当にいいですね。
    僕もコンクールが楽しみで仕方がありません。

    桜のおはなし、気に入ってくださり、ありがとうございます。
    僕もじっくり頑張りますね。
    2009年11月05日 20:41
  • なっち

    こんばんは。
    いつも、ありがとうございます^^
    お体に気をつけてゆっくり復帰訓練頑張ってくださいね。
    2009年11月05日 21:13
  • なっち様>
    コメント、そして温かい励ましの言葉、ありがとうございます。
    のんびりゆっくりやっていきますね。
    2009年11月05日 21:24
  • トヨママです

    そうかぁ~~♪
    桜の木も、寒い冬を頑張って耐え抜いていたのかぁ・・・で、春になったら思いっきり~綺麗な花✿・・咲かせてたんだぁ~~~(しみじみ・・・) 笑
    何だか、私も頑張らなくっちゃ!!・・そんな気になってきましたよ❤
    人間も、頑張ったら・・満開の花、咲かせられるのかな?。。。。(笑)
    2009年11月05日 22:28
  • koji

    とっても、いいお話しでした。
    こういうの大好きです。
    冬があるから春のありがたさが身にしみる。
    春夏秋冬、全部あるからそれぞれを楽しむことができるんですよね。
    心があったかくなりました。

    よいお話しをありがとございました。
    2009年11月05日 22:35
  • ばっかバッハ

    ヒナちゃんと同じように、感動しました!
    我慢して耐え抜いて花を咲かす。
    まさに人生そのものですね!

    涅先生が生徒に慕われてるのも分かりますね…今度、私も生徒にしてくださいね。
    復帰訓練、頑張ってください。

    ちなみに、森山直太郎の「さくら」は、私の得意なレパートリーの一つです。地元のカラオケ大会で歌って、特別賞をもらいました。…って関係ないですね。すみませんm(_ _)m
    2009年11月05日 23:48
  • トヨママ様>
    コメント、ありがとうございます。
    実は、桜色の染料は冬の桜の木の樹皮から取っているそうです。まさしく、冬の寒さが厳しい時に花を咲かせる準備をしているんですね。
    自然ら学ぶことって、本当にたくさんあると思います。それを真摯に受け止めて、努力を続ければ、きっと満開の花を咲かせることができると思いますよ。
    2009年11月06日 13:37
  • koji様>
    コメント、ありがとうございます。
    こんなへたくそな創作で喜んでいただいて、本当にありがとうございます。
    四季それぞれの情緒がある日本って、やっぱりいいですよね~!
    2009年11月06日 13:39
  • ばっかバッハ様>
    コメント、ありがとうございます。
    僕も満開の花が咲かせられるように頑張りますよ。ただ、ほどほどに、ですけど。

    おぉ!弦楽器ばかりでなく歌まで!
    やはり音楽に精通されていらっしゃるんですね~!さすがです!
    2009年11月06日 13:41
  • marippechan

    今回はヒナちゃんでしたね☆
    サクラの花は本当にいいですよね~(^-^)
    来年のサクラが楽しみです☆
    その頃はルンルンも1年生です(^0^)/
    ヒナちゃんのように学校のサクラに応援してもらえるといいな~♪
    2009年11月06日 16:55
  • marippechan様>
    コメント、ありがとうございます。
    ルンルンさんが1年生の時は、きっと桜の木も笑顔で迎えてくれますよ。だから、とびっきりの笑顔で入学していけると、桜の木も喜ぶと思います!
    2009年11月06日 17:33

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