ユキとユカリのおはなし ~ つぶやきシリーズ ~

皆さん、こんばんは。

少し前、「子ネコのゲンキのおはなし」を書きましたが、僕の中で心残りは、現実には確かにあることだけれども、どうしてもお腹を空かせて飛び出してしまった「いもうと」のことが気になって…。
何としてでも救おうと、書くことにしました。
ただ、今度ばかりは今までの「どうぶつ」視点ではなく、「にんげん」視点で書かないと、うまく書けないような気がします。
実は今まで「にんげん」視点を避けてきたのは、名前を出すと、現在や過去の教え子とかぶる可能性があったからで、それがちらついて書きづらくなりそうだったからです。
でも、いっそのこと、ある時のメンバーの名前を一気に使えばいいかな、と思いました。
さて、初めての挑戦の「にんげん」視点。
いったいどうなることやら…?

ども。昨日の土手で咲いていた花たちです。

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ユキとユカリのおはなし


その日は、雨の日だったの。
大好きなユキちゃんがお引っ越しした日。
駅まで、お見送りしたの。
わたしとユキちゃんは泣きながらお別れした。
ユキちゃんたちが乗った電車が見えなくなるまで、ううん、見えなくなってもずっとお見送りしていたの。

帰りの車の中でも、わたしは泣いていた。
だって、ずっとずっといっしょだったユキちゃん。
ときどきけんかもしたけど、すぐに仲直りして、たっくさん遊んだし、たっくさんお話しもした。
だけど、ユキちゃんのお父さんのお仕事のために、お引っ越しが急に決まっちゃった。
もっともっといっしょにいたかったのに、急にいなくなって、心の中がからっぽになっちゃったみたいで、涙がとまらなかったの。

「ユカリ、いつまでも泣くなよ。」
ヒロキお兄ちゃんが優しく声をかけてくれた。
「そう、ぼくたちだって悲しいけど、大きくなったらまた会えるさ。」
リョウタお兄ちゃんもなぐさめてくれた。
ユキちゃんのおうちには、わたしたちきょうだいと同い年のきょうだいがいて、家族中でなかよしだったの。
ヒロキお兄ちゃんも、ユキちゃんちのゲンタお兄ちゃんとのお別れがつらかったみたい。
リョウタお兄ちゃんも、ユキちゃんちのトモカズお兄ちゃんとのお別れが悲しかったみたい。
でも、お兄ちゃんたちは強いなぁ。
泣かないで、笑ってお別れしていたの。
握手して、
「また、ぜったい会おうな!」
って、約束していた。
わたしたちだけ声をあげて泣いていたの。
そして、涙はいつまでたってもとまらないの。


だんだん雨が強くなってきた。
お父さんが運転しづらいみたい。
そして、おうちまであと少しの小さな神社の前で、いきなり
“キキーッ!”
って音を立てて、ブレーキをふんだの。
あんまり急にとまったものだから、車が雨ですべって、道路のガードレールっていうのに、ちょっとごっつんこしちゃった。
わたし、びっくりしちゃって、涙がとまっちゃった!
「お父さん、どうしたの?」
ヒロキお兄ちゃんが聞くと、
「ああ、神社から何か飛び出してきてね。ちょっと車にきずがついていないか、見てくるよ。」
そう言って、お父さんが車から出てったの。
お父さんはすぐにもどってきて、
「たいしたきずじゃなかったようだよ。ただ、朝のゴミ出しに遅れたのかな、ゴミ袋がおいてあってね、それをつぶして、車の前がゴミだらけだ。お兄ちゃんたち、雨の中大変だけど、ゴミの片付けを手伝ってくれないか?」
って言ったので、お兄ちゃんたちが車をおりようとしたの。

すると、
“いたい…、いたいよぅ!……おにいちゃん!”
そんな声が聞こえたの。
「ヒロキお兄ちゃん、リョウタお兄ちゃん!何か聞こえた?」
わたしはお兄ちゃんたちに聞いたけど、
「え?別に、何にも聞こえないけど?」
「ユカリの空耳じゃないの?」
て言って、外へ出ようとした。
でも、
“おにいちゃん!…いたいよ!…たすけて…!”
やっぱり声が聞こえる!
「ねぇ!お兄ちゃんたちってば!」
「…!」
「……ヒロキ兄ちゃん!何か、聞こえたよね?」
お兄ちゃんたちには言葉で聞こえなかったみたいだけど、確かに何かが聞こえたみたい!
わたしは声がするほうに向かって、かさもささないで車を飛び出したの。
そしたら、真っ白な子ネコがたおれていたの!
「お父さん、お兄ちゃん、ネコが、ネコがいる!とってもいたいって言ってる!」
みんなわたしのところへきてくれた。
「こいつか。さっき飛び出してきたのは。」
「ぶつけちゃったの?」
「いや、そんなはずはないけど、おどろいて転んじゃったんだろう。」
お父さんは、子ネコを優しく抱き上げたの。
そして、お兄ちゃんたちも
「さっき聞こえたニャーッて声、この子だったのか。」
「あんまり小さな声だったから…。ユカリはよく気がついたね。」
って言いながら、子ネコのようすを見ていた。
「だってこの子、いたいって、たすけてって、お兄ちゃんって、ずっと言ってたんだもん!」
わたしがそういうと、みんなふしぎそうな顔をして、わたしを見たの。
「このネコが?」
お父さん、信じてくれないかなぁ?
リョウタお兄ちゃんがわたしにかさをわたしてくれながら、
「お父さん。きっとユカリには聞こえたんだよ。」
そう言ってくれた。
ヒロキお兄ちゃんは
「ユカリの言葉を信じようよ。おれ、先にゴミを片付けてくる。そしたら、すぐそこの動物病院に連れていこうよ!」そう言ってくれた。
優しいお兄ちゃんたち!
ありがとう!
「ああ、そうだね。わかったよ。ユカリは優しい子だから、この子の声が聞こえたんだ。ヒロキ、片付けはいいから、このネコを連れてその病院まで行きなさい。ここの片付けは父さんとリョウタでやっておく。そしたら、あとから病院に行くから。ユカリもヒロキお兄ちゃんについていきなさい。」
お父さんもわかってくれたんだ!
みんな、みんな、ほんとうにありがとう!

ヒロキお兄ちゃんは子ネコを抱きながら、わたしを連れて急いで動物病院に行ってくれたの。
でも、その間も、子ネコは
“いたいよぅ…、おにいちゃん…”
って言っていた。
「おにいちゃん」ってだれだろう?
ヒロキお兄ちゃんのこと?
リョウタお兄ちゃんのこと?
だから、
「いたいの?だいじょうぶだから。今、お医者さんに行くから!…ねぇ、お兄ちゃんってだれ?」
って聞いたの。
「ユカリ?お前何言ってるんだ?」
ヒロキお兄ちゃんは、またふしぎそうな顔でわたしを見た。
「この子が、ずっと言ってるの!おにいちゃんって!」
わたし、一生懸命に説明した。
「ああ、わかった。でも、まずこの子のことがだいじだろ?お話しはあとにしてやろうな。」
ヒロキお兄ちゃんにはニャーニャーとしか聞こえないみたい。
わたしにだけしか言葉が聞こえないんだ。
だったら、あとでゆっくりお話しを聞いてあげよう。

動物病院の先生は、とっても優しい先生だった。
ヒロキお兄ちゃんがわけを話すと、すぐに診てくれた。
少しおくれて、お父さんもリョウタお兄ちゃんもきてくれた。
みんなで待合室で、先生が治してくれているのをずっと待っていた。
先生は診察室でていねいに診ていてくれたから、とっても時間がかかった。
わたしには長い長い時間だったの。
それに、診察室からは
“おにいちゃん!いたいよぅ!”
そんな声がずっと聞こえてくるから、わたしも何だか痛い気持ちになってくる。

お医者さんが診察室から出てきた。
笑顔で出てきたから、それだけでホッとした。
「大丈夫ですよ。転んだか何かで足をケガしていますが、ちゃんと治療しましたので、無理さえしなければ悪くなるようなことはありません。ただ、だいぶ衰弱していましてね、エサを食べていないのでしょう。」
おなかもすいていたんだね。
かわいそうに。
「で、どうしますか?この子ネコ。話しを聞いたかぎりでは、みなさんの家のネコではないようですが?」
そう言われて、お父さんがお医者さんに聞いたの。
「どうするって、どういうことになるんでしょう?」
「まぁ、どこかで飼っていたネコなら、飼い主も探していますから、こういう病院やペットショップなどに頼んで“このネコを預かっています”とでも掲示させてもらえばすぐに見つかるでしょう。ただ、どうやら子ネコで、今日の雨のせいでしょうが、だいぶ汚れていて、捨てられていた可能性もありますね。となると、里親をさがすか、でなければ…。」
「保健所…ですか?」
「ええ。最悪の場合は。」
お父さんの目が何だか悲しそうになった。
お兄ちゃんたちも何かわかったみたい。
でも、わたしには「ほけんじょ」って意味がわからなかったの。
お父さんがあまり悲しそうな顔だったので、わたし、言ったの。
「ねぇ、お父さん。あのネコね、ずっとおにいちゃん、おにいちゃんって言ってるの。もしかしたら、あそこの近くにおにいちゃんネコがいるかもしれないよ。」
「そうか…。神社から飛び出してきたな…。よし、ちょっと見てくるよ。みんな、ここで待ってるんだぞ!」
お父さんは、わたしたちを病院において飛び出しちゃった。

わたしは、お医者さんに頼んで、子ネコのいる診察室に入ったの。
そして、そっと話しかけたの。
「ねぇ。もういたくない?おにいちゃんってだぁれ?」
お医者さんも近くで見ていたけど、気にならなかった。
“え?わたしの声、聞こえるの?”
子ネコはおどろいた顔してる。
「うん。聞こえるよ。ずっと、いたいって、おにいちゃんって言ってたでしょ?」
“うん。そう!あなたが助けてくれたの?”
「わたしだけじゃないよ。わたしのお父さんもお兄ちゃんたちも、そしてお医者さんも。」
“ありがとう!……そう、おにいちゃん!おにいちゃんはどこ?『じんじゃ』ってところでわたしが帰ってくるのを待ってるはずなの!わたしたち、『にんげん』の『かぞく』に捨てられたみたいで…。”
このあと、子ネコは今までのことをお話ししてくれたの。
4人きょうだいの弟だけ残して、3人が箱に入れられて神社に捨てられたこと。
一番上のおにいちゃんが、黒いネコのおじさんについていっちゃったこと。
そして、おなかがすいたから、自分が箱を抜け出して、そして、あそこでけがをしたこと。
「やっぱり!神社には、わたしのお父さんが見に行ったわ。おにいちゃん、いるといいね。そうそう、わたしにも弟がいるの。ユウキって、赤ちゃんだけど。何だかわたしといっしょのきょうだいね。」
“そうだね。いっしょだね。でも…、はなればなれじゃないから幸せだね。”
「あ…、ごめん!そんなつもりじゃ…。」
“ううん、いいの。ちょっとうらやましいなって。”
それからずっといろいろお話ししていたの。

すると、お医者さんが
「君はこのネコとお話しできる子なんだね。」
って、後ろから声をかけてきたの。
「僕もね、小さい時はいろいろな動物たちの声が聞こえたんだよ。今でもたまに聞こえてね。だから、いろいろな動物たちの力になりたくて、獣医さんになったんだよ。」
「じゃあ、先生もこの子の声が聞こえるの?」
「いや。でも、いたいってのと、おなかがすいたってのは聞こえたかな?ハハハッ。」
優しい先生の優しい笑い声に、子ネコもホッとしたみたい。
“いい『にんげん』ね。あの人も、あなたも。”
「うん!わたしの周りはみんないい『にんげん』だよ!」

外の雨が弱くなってきたみたい。
お父さんが病院にもどってきた。
「どうやら、捨て猫らしいね。神社の軒下に箱があって、“このネコたちを頼みます”って紙も貼ってあったけど、何もいなかったよ。でも、僕が神社に着く前に、小さなネコを大切そうに胸であたためるようにしていた若者とすれ違ったから、もしかしたら、その人に拾われたかもしれないね。」
少しホッとしたような、でもかわいそうなような気がした。
この子のおにいちゃんも助かったんだ。
だけど、どこの人がつれていったかわからないから、はなればなれになっちゃった…。

「お父さん、わたし、この子をおうちに連れていきたい!ねえ、お願い!」
わたしは、お父さんに一生懸命お願いしたの。
すると、お父さんもお兄ちゃんたちもにっこり笑っていた。
「そういうと思ったよ。それに、お父さんもお兄ちゃんたちも、ユカリと同じ気持ちだよ。さて、あとはお母さんをどう説得するかだけどね。ヒロキもリョウタもユカリも、お父さんの力になってくれよ。なにしろ一番の難敵だからね。」
ウフッ、お父さんがちょっと困った顔した!

「そういやユカリ。この子の声が聞こえたんだよな。この子、男の子かい?女の子かい?」
リョウタお兄ちゃんが聞いた。
「女の子だよ。わたしとおんなじ!」
お医者さんも
「ええ、ユカリちゃんが言うとおり、女の子ですよ。」
って言ってくれた。
今度は、ヒロキお兄ちゃんが言ったの。
「へえ。ユカリってすごいなぁ!女の子か。じゃあ、ユカリが名前をつけてやればいいよ!」
「え?名前?…ねえ、あなたは何ていう名前なの?」
“なまえ?う~んと、…わからない!”
「じゃあ…。からだが真っ白だから、ユキ!ユキちゃんとお別れした日に会った子だから、ユキ!あなたはユキ、ユキちゃんよ!」
すると、お父さんたちが笑ってる。
「やっぱりそういうと思ったよ。」
だって!


ユキちゃんとお別れした日に子ネコのユキちゃんと出会ったの。
そして、今でもわたしたちお話ししているのよ。
今度、お引っ越ししたユキちゃんにお手紙書くの。

新しい、とってもすてきな家族が「ひとり」増えましたって!







それでは、明日がなさんにとって心あたたまることの多い1日でありますように。


おやすみなさい。











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この記事へのコメント

  • Beehive

    涅さん、こんにちは。
    ご訪問が遅くなってしまい、すみません。

    僕も昔はよく犬や猫をよく拾ってくる子どもでした。
    でも動物を飼える環境ではなかったので、こっそり公園や神社のすみっこで育ててましたが、たいてい数日でいなくなってしまいました。

    僕は「拾う」より「拾われる」ことのほうが多かったかもしれない。
    本当に困った時には、誰かに拾ってもらうことが多かった。
    そしてそういう恩わる人のもとを、ある日突然出てきてしまうことも多くて。
    僕は所詮、恩知らずな捨て猫なのでしょうか。
    でも、拾ってくれた人のことは、そこを出たあとも、いつまでも忘れていません。
    <S>
    2009年11月22日 20:15
  • Beehive<S>様>
    コメント、ありがとうございます。
    恩知らずな捨て猫…なんてたぶん誰も思っていませんよ。だつて、拾ってくれた人のことを忘れていないのですし。
    僕のような仕事をしていれば、卒業後は音信不通が当たり前です。でも、新聞やニュースで彼らの名前が悪いことで出てさえいなければ、僕はそれで充分だし、きっとそれぞれ頑張っているのだろう、それぞれの幸せを追い求めているのだろう、そう思っています。
    拾う人も拾われる人も何かの縁で結ばれるもの、だから主人公の女の子の名前は「ユカリ(縁)」にしました。お互い何らかの「思いやり」がなければ、縁は結ばれませんよね。
    2009年11月22日 20:26
  • koji

    「飛び出した子猫」
    無事でよかったです。
    ホッとしました。

    ・・・とすっかり感情移入しているボク・・・

    涅さんの「つぶやきシリーズ」どんどんレベルが上がっているように感じているのはボクだけでしょうか
    2009年11月23日 08:21
  • koji様>
    コメント、ありがとうございます。
    やっぱり助けたかったんですよ。心のどこかで。で、こういう形を取りました。
    レベル?
    いやぁ、たいしたことない、誰でも書ける文章ですよ。
    2009年11月23日 11:30

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