風の子守唄 ~3日目~

3日目

また、朝が来た。
やっぱり夢じゃないんだね。
僕は、おいていかれたんだね。
ううん、違う!
お出かけからまだ帰ってこないだけなんだ。
きっと、今日は迎えに来てくれるんだ!
ねえ、おばあさん。
…おばあさん?
ねえ、ねえってば!

おばあさん、動かない。
息をしていない。
昨日、あんなにあたたかかったのに、どうして、どうして冷たくなってしまったの?
どうして動いてくれないの?
どうして優しい言葉を書けてくれないの?
ねえ、ねえ、おばあさん…!

“かわいそうに。たった3日じゃないか。たった3日、家に置いてあげれば、みんなに看取られて旅立つことができたのに…!さびしかったろうなぁ、つらかったろうなぁ、ごめんな、本当にごめんな。あの時、もっと強く説得していればよかったんだ!”
「しょくいん」さんは、ボロボロ涙を流している。
悔しそうだった。
悲しそうだった。
何で自分を責めているの?
“今日はお前たち1人でも多く、「さとおや」ができるといいよな。俺もがんばるから!”

隣の部屋に移った。
一番奥の部屋が気になって仕方がない。
僕らが隣に移るってことは、前にこのお部屋にいた子たちは、そのまた隣の部屋にいくんだよね?
だったら、一番奥のお部屋の子たちは、次の日にはどうなっているの?
おうちの人がお迎えにきてくれたのかなぁ?
それとも、またどこかに連れていかれちゃうのかなぁ?
いったい、どうなっているんだろう…?

今日も「あいごだんたい」の「にんげん」たちと、「さとおや」という「にんげん」たちが来た。
僕らの前のお部屋からは、2人連れていかれた。
僕らのお部屋からも、今日は茶色い男の子が連れていかれた。
昨日とおんなじだよ。
みんな、泣いて叫んでいる。
「おうちの人じゃない!どこへ、どこへ連れていくの?助けて!だれか助けて!」
僕は耳をふさいだんだ。
怖くて怖くて、僕もだれか知らない「にんげん」にどこかに連れていかれちゃうのかな?
そして、やっぱり昨日とおんなじ。
「しょくいん」さんが、僕らに謝っている。
“ごめんな、ごめんよ…”
僕たちが悪いんじゃないの?
ねえ、おうちの人に伝えて!
僕、いい子にしているって!
そうすれば、そうすれば、きっと…!

「ギャン、ギャン!グェッ…!」
ああ、またあの苦しそうな声だ。
そして、すぐに聞こえなくなる。
そしてまた、「しょくいん」さんが泣いている。
一番奥のお部屋の方。
何が起きているの?
何があったの?

夜が来た。
残ったのは、僕も含めて3人。
かたまって、あたたかくして寝ていた。
そして、初めてヒソヒソお話しをした。
「ねえ、おばあさん、どうしちゃったのかしら?」
「わからない、動かなくなっちゃったし、息もしてなかった。」
「僕たちどうなるのかなぁ?」
みんな思っていることはおんなじだった。
「しょくいん」さんがなぜ泣くのだろう、「あいごだんたい」とか「さとおや」って何のことだろう、あの悲しい叫び声はいったい何だろう、一番奥の部屋に行ってしまうのが怖い…。
3人ともおんなじ。
「ねぇ、いい子にしていれば、きっとおうちの『にんげん』が迎えに来てくれるんだよね?」
「でも、もう3日よ。だとしたら、おうちの『にんげん』は何をしているの?」
「もう来ないって、あきらめた方がいいんじゃないか?」
そんなことあるもんか!
僕はあきらめないぞ!
僕は、僕はおうちの「にんげん」を信じている!

かたまってお話しをしているうちに、僕たちは眠くなった。
辺りが静かになった頃、また風さんが歌ってくれた…。

♪~おやすみ、おやすみ、よい子たち
  だんだん明日が来ることが
  だんだん明日が怖くなる
  おやすみ、おやすみ、よい子たち
  泣いて泣いて泣き疲れたろう
  今日はぐっすりおやすみなさい~♪

ありがとう、風さん。
でも、明日がだんだん怖くなるって、どういうこと?
風さんの歌声も悲しそうだったよ。
風さん、教えて!
僕たちは、どうなるの?

…風さんは、何も言わずに、さびしそうにどこかに吹いて行ってしまった。

…おやすみなさい。

明日こそ、そう、明日こそ、きっとお迎えに来てもらえるよね…。










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